兄弟で実家(不動産)を相続したときの4つのポイント

  • 自分は親と長年同居してきたから、実家をもらって当然ではないのか?
  • 兄が遺産の実家を独占しようとしているが、それだと不公平になると思う
  • 実家を売って兄弟で公平に分けたいのに反対される
  • 実家を分けるのが難しいので放置しておこうと思うけれど、問題がある?
  • 兄弟の誰も実家に住みたくないし管理もしたくない。誰も住まない実家はどうしたら良いのだろうか?

いくら仲の良い兄弟・姉妹でも、両親が亡くなって実家を相続するとさまざまなトラブルが発生する可能性があります。
どのようなトラブル事例があるのか、またその際の解決方法や実家を相続する際の流れについて、重要な4つのポイントを解説していきます。

実家を相続したとき、ありがちなトラブル事例


まずは兄弟が実家の不動産を相続したとき、よくある典型的なトラブル事例を8つ、ご紹介します。

同居していた長男が代償金なしで家を相続したい

長男の家族などが長年親と同居していたケースでは、長男は引き続いて実家に住みたいと希望することが多いです。
そうでないと家族で住む家がなくなってしまうからです。
このとき長男としては「家を継ぐのだから、自分がもらって当然」という考えを持ち、他の兄弟に代償金を一切払わないと主張することがあります。
しかしそれでは他の兄弟にとって不公平感が強くなるので納得できず、遺産分割協議でトラブルになってしまいます。

献身的に介護した相続人が家をほしがる

兄弟の中に、親を献身的に介護した相続人がいる場合があります。
たとえば妹が母親を長年介護し続けてきたケースなどでは、相続が起こったときに妹が「私は多めに遺産をもらう権利があるはずだから、家をもらいたい」と主張する可能性が高くなります。
しかし他の相続人としては「娘だから当然のことをしただけ」「家を全部もらうのは多すぎる」などと主張して納得できず、トラブルになりやすいです。

遺産が家のみで公平に分けられない

相続財産が「実家の不動産」だけという場合、兄弟間で公平に分けるのが非常に難しくなります。
家を1人がもらうと不公平ですが、兄弟が「共有」にすると将来権利関係が複雑になってトラブルになりやすいです。
かといって家を売却するには相続人の足並みが揃わないといけないので、反対する相続人がいたら売却できません
さらに現在家に住んでいる相続人がいる場合、その相続人が家に住み続けるには代償金の支払いが必要ですが、当人に支払い能力がなかったら「家を出て行けと言うことか」ということになってしまいます。

このように相続財産が「実家しかない」ケースでは遺産分割が紛糾するおそれが高く、注意が必要です。

家を売りたい相続人と、守りたい相続人がいて話がかみ合わない

実家を相続したとき、相続人間で希望が合わないケースが多々あります。
ある相続人は「家を売って公平に分けたい」と希望しており、他の相続人が「先祖代々の不動産だから絶対に売れない」と希望している場合、話し合いをしても平行線にしかなりません。

代償金の金額でもめる

代償金とは
相続財産を複数の相続人でうまく分割できない場合などに、一部の相続人が相続財産を現物で取得する代わりに、他の相続人にその代償として金銭を支払う方法を代償分割いい、その支払われる金銭を「代償金」といいます。
実家を誰か1人の相続人が相続することに決まったら、他の相続人との間で公平にするために「代償金」を支払います。
つまり家を独り占めにする分、他の相続人に対しては法定相続分に相当するお金を支払って清算するのです。
しかしこの代償金の金額でもめてしまうパターンが非常に多く、注意が必要です。
代償金の金額は不動産の「評価」を基準にして決めますが、不動産の評価方法には路線価や実勢価格などいくつかありますし、実勢価格でも依頼する不動産会社によってさまざまだからです。
それぞれの相続人が自分の有利になる評価額を持ち出すと合意できず不動産鑑定士などに依頼するしかなくなりますが、鑑定士に依頼すると莫大な費用(数十万円程度)がかかり、相続人全員にとって損になります。
代償分割が適する3つの要件
  1. 相続人全員が遺産(不動産)の評価に納得している
  2. 相続人全員が代償金の支払い方法について合意している
  3. 不動産を相続する相続人に代償金の支払い能力がある

実家を共有名義にして将来的にトラブルになる

相続人間で意見が合わず、実家をうまく分けられないときには実家を「共有」状態にしておくことが可能です。
遺産相続が起こったときには、不動産は法定相続人が法定相続分とおりの「持分」を取得して共有状態になります。そのまま放置しておいたら、不動産は相続人の共有のままです。
ただ不動産を共有状態にしておくと、将来的にトラブルになる可能性が高くなります。
共有不動産ではそれぞれの持分権者の権限が非常に弱められ、自由に不動産を活用できなくなるためです。
たとえば賃貸や修繕、リフォーム、抵当権の設定なども1人ではできない可能性が高くなりますし、売却する際には持分権者全員の同意が要るのでかなりハードルが高くなります。
さらに相続人が亡くなって再度相続が起こったら、共有持分が細分化されて誰が権利者かわかりにくくなり、持分権者が連絡を取り合うのも難しくなってしまいます。
実家を分けにくいからといって「とりあえず共有」にするのはお勧めではありません。

誰も住みたくないから管理せず放置してしまう

親が田舎に住んでいて子どもたちはみな都会に出ており、田舎の実家を相続したときなどには、実家を相続した子どもが「誰も住みたくない」ので、実家を管理せずに放置してしまうケースが多々あります。
遺産分割協議で誰のものにするかも決めず、相続登記も行わず「価値がない」「関わりたくない」「忙しいから面倒」などと考えて誰も管理しないのです。
しかし誰も関わりたくないとしても、相続人になったからには不動産の「所有者」として責任を負います。
家が倒壊などして人を傷つけたら、相続人が所有者として損害賠償しなければなりません。
家が古くなって周囲の環境を悪化させたり危険を発生させたりすると、自治体から家の撤去や適切な管理を求められますし、それでも放置しておくと最終的には自治体によって家を撤去され、高額な撤去費用を請求されるおそれもあります。
家に誰も住みたくないからといって放置するのは絶対にNGです。

相続したのに登記をしない

もう1つ、ありがちなのが「登記」の問題です。
遺産分割協議を行って特定の相続人が家を相続したのに相続登記をしなかったり、共有の登記をしなかったりして、被相続人名義のまま放置します。
確かに所有権が移転しても登記は義務ではありませんが、登記をしておかないと誰が実家の真実の権利者かわからなくなってしまいます。
すると無権利者が勝手に家の所有者を名乗って家を誰かに売却してしまう可能性もあります。
また再度の相続が起こり、今の相続人の子供達が登記しようとしたとき、祖父から父への登記と父から自分達への登記の2重の相続登記が必要になり、必要書類も多くなって大変手間がかかってしまいます。
不動産の相続が起こったら、期限や義務がなくても早めに相続登記をすべきです。

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空き家のまま放置するリスク


兄弟で親の実家を相続したとき、「誰も住みたくない」から空き家のまま放置してしまう例があります。
その場合高いリスクが発生するので、以下でみてみましょう。

空き家が犯罪に使われる

地方の実家を相続したとき、誰も管理しないで放置しておくと相続人の知らない間に家が犯罪に使われるケースがあります。
たとえば家の中に勝手に入られて大麻などを栽培されたり、人の監禁などの場所に使われたり、不法滞在の外国人が住み着いてしまう例もみられます。
このような犯罪が後で発覚して事件になると、所有者としても「知らない」では済まされません。
「関与していたのではないか?」と疑われて取り調べを受けることになりますし、家の処分もより困難となって大変な負担になってしまいます。

空き家が荒れる

次に空き家が荒れることが問題です。建物は、誰かが居住・管理していると維持しやすいものですが、誰もいなくなるととたんに酷く荒れてしまうからです。
屋根や壁などが朽ちたり窓ガラスが汚れたりヒビが入ったり割れたり、害虫や害獣が住み着いたり、悪臭を発生させたりします。
ゴミの不法投棄をされる例も多々あります。
空き家は周辺環境を大きく悪化させ周辺住民に大きな迷惑をかけてしまうので、苦情を受ける可能性が高まります。
それだけではなく、家の壁や屋根が落ちて通行人に怪我をさせた場合などには、所有者である相続人が賠償金を払わねばなりません。

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固定資産税がかかる

相続人自身が「要らない」と思っている家であっても、所有者である限り毎年固定資産税の支払が必要です。
田舎では金額的には高くならないかもしれませんが、放置している物件のために費用がかかるのは無駄です。
また建物を放置していて倒壊の危険などが発生すると、自治体が建物を指定して指導や撤去の対象にしてしまいます。
最悪の場合、自治体が建物を撤去して処分費用を相続人に請求することがありますし、その場合土地の固定資産税が大きく増額される可能性が高くなります。

放火などの被害に遭う

建物を放置していると、放火被害に遭いやすくなります。建物の延焼によって周辺住民に迷惑をかけたら、たとえ失火責任法によって損害賠償責任を負わないとしても強い恨みを買ってしまうでしょう。重過失があったら損害賠償義務も発生します。御見舞やお詫びのために多くのお金がかかってしまう可能性も高くなります。

以上のように、家が要らないからと言って放置しておくと非常に大きな問題があります。

 

家が要らないときの対処方法

相続人全員が家を要らない場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?

家を売却して分ける

家を売却する方法がもっともお勧めです。田舎の実家で「こんな家、誰もほしくないだろう」と思うような物件でも、意外とほしい人はいるものです。
最近では地方移住したい人も増えていますし、自分で住むだけではなくシェアハウスを経営したい人の需要もあります。
家を売った場合には、売却金から不動産会社の仲介手数料や司法書士費用、税金などを引いた手残りの分を、相続人たちが法定相続分に応じて分配できます。

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土地を活用する

実家を売らない活用方法もあります。たとえば建物が古くなっている場合、取り壊して新たに賃貸アパートを建築することも可能ですし、場所によっては駐車場にしたり店舗に貸したりすることも考えられます。
この場合、収益金を相続人が受けとることが可能です。
土地にはさまざまな活用方法があり、状況に応じた最適な方法を選択できます。
どのような手法であっても放置しておくよりよほど良いので、一度不動産会社に相談してみることをお勧めします。

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実家の分け方、相続の流れ


実家を相続したとき、相続人たちでどのようにして分ければ良いのか、相続の流れをご紹介します。

まずは遺産分割協議を行って話し合う

遺産相続が発生したら、まずは相続人たちが全員で「遺産分割協議」を行い、実家やその他の相続財産の分け方を決めましょう。
実家を誰が相続するのか、代償金をどれだけ支払うのか、もしくは家を売って売却金を分け合うのかなど、全員が納得する方法を決定します。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議ができたらその結果を「遺産分割協議書」という書面にまとめます。この書面があれば、不動産の相続登記や預貯金の払い戻しなどに使う事が可能です。

遺産分割調停を行う

相続人同士が話し合っても遺産分割協議がまとまらないときには、遺産分割調停を行って話し合いをする必要があります。
調停では家庭裁判所の調停委員が間に入り、相続人同士の話をまとめてくれます。
調停で合意ができたら「調停調書」が作成されて、それに従って相続登記や実家の売却などを進めます。

遺産分割審判で決定する

遺産分割調停をしても相続人の意見が合わない場合には「遺産分割審判」という手続きで遺産の分け方を決定します。
審判になると、裁判官が強制的に実家や他の遺産の分け方を決めてしまうので、相続人たちが自分たちで決定できなくなります。
ときには望まないのに家を強制競売にかけられるケースなどもあるので注意が必要です。
遺産分割審判になった場合、自分たちだけで取り組んでいると不安なので弁護士に相談・依頼した方が良いでしょう。

売却する

遺産分割協議や調停などで家を売却する事に決まったら、相続人たちが全員共同で「売主」となり、売却活動を進めていかねばなりません。
ただし委任状を作成すれば、代表者を決めることも可能です。遠方の相続人や高齢の相続人の場合、代表者に委任すれば自分は何もしなくても家の売却を進めて売却金も受け取れるので、楽です。
不動産会社で相談すれば、ケースに応じて最善の方法をアドバイスしてもらえるので、売却を希望されているならば、一度問合せをしてみましょう。

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登記する

遺産分割で特定の相続人が実家を相続することに決まったら、速やかに相続登記をしましょう。
登記をせずに放置しておくと、権利関係がわからなくなって混乱の原因になるからです。
自分で法務局に行って申請するか、わからないときには司法書士に依頼しましょう。

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まとめ

実家を相続したとき誰も住みたくないなら売却や活用を考えてみると良いです。
トラブルになる前に、一度不動産会社に相談してみましょう。