• コロナ禍による業績不振で不動産を現金化したい
  • 不動産を売却するとき法人と個人ではどんな違いがあるの?
  • 法人が不動産売却するメリットは?
  • 法人が不動産売却で節税する方法とは?

こんな疑問にお答えします。

 

法人が不動産を売却するとき、税制を始めとして個人とは異なる点が多々あります

今回は法人として不動産を売却するときのポイントを押さえて、知っておくべき知識を中心に解説していきます。

 

記事の信頼性

執筆者:毎日リビング株式会社 代表取締役・宅地建物取引士 上野 健太

現役の不動産業者・経営者としての経験を活かし、売主の立場で記事を執筆しています。
資産の売却で経営のピンチを乗り越えた経験有り。(NHK・経済誌の取材実績も)

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不動産売却の場面で法人と個人の違いとは?

不動産を売却するとき、売主が法人のケースと個人のケースではどのような違いがあるのか、以下でみていきましょう。

 

利益に課される税金や控除についての違い

個人と法人とでは、不動産を売却して得られた利益に対する「税金」のかかり方がまったく変わってきます。

 

①個人の場合は「譲渡所得税」がかかる

個人の場合には、不動産の売却によって得られた「利益(=譲渡所得)」に対して「譲渡所得税」という税金がかかります。

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間が5年未満か5年以上かで変わります。
5年未満の場合「短期譲渡所得」となり、所得税が20%、住民税が9%の合計39%もの税金がかかります。

一方所有期間が5年以上の場合には「長期譲渡所得」となり、所得税が15%、住民税が5%の合計20%まで下がります。

さらに個人の場合、居住用不動産を売却した場合には、3,000万円までの譲渡所得の控除が認められます。3,000万円までの利益であれば、譲渡所得税も住民税もかかりません。

そして個人の場合の不動産譲渡所得は「分離課税」なので、他の所得と合算せず不動産所得のみを分離して計算、申告、課税対象にできます。

 

②法人の場合は「法人税」がかかる

一方法人の場合にかかる税金は「法人税」です。
法人税は分離課税にならないので、すべての利益や損失が合算されて全体に税金が課されます

不動産を売却した際の法人税の税率や金額は、売却によって利益を得られたかどうかで変わってきます。
法人の場合には不動産の「簿価」と売却益の差額により、利益を計算します。

簿価は決算書の貸借対照表に載っており、基本的に不動産を取得したときの金額から減価償却費(建物の場合)を引いた金額です。

不動産が簿価より高額で売れたら「特別利益」を計上して法人税が上がりますし、簿価よりも売却金額が低額であれば「特別損失」となって法人税が下がります。

法人の場合には個人と異なり短期譲渡所得や長期譲渡所得の違いはなく、何年保有していても同じ税率が適用されます

また法人の場合、居住用不動産の3,000万円までの譲渡所得税控除の制度は適用されません

法人税の税率は、年間利益が800万円以下かそれを超えるかによって異なります。法人税と法人地方税、法人事業税などの税金をすべて足した実効税率は、年間利益が800万円までであれば26~28%、800万円を超えるケースでは33.8%程度となります。

参考:法人税の税率(国税庁サイト)

 

消費税の取扱い

法人と個人とでは「消費税」の取扱いも変わってきます。
消費税は、「課税対象事業者」にのみ課税されます。課税対象事業者とは、営業行為によって利益を上げているものです。
法人は一般的に課税対象事業者となるので、消費税を課税されます。

一方個人は通常、課税対象事業者になりません。そこで個人が不動産の売主になる場合には消費税はかかりません。

また不動産の中でも消費税が課税されるのは「建物」のみです。土地は消費財ではないので、消費税の課税対象になりません。

そこで法人がマンションや戸建てなどの建物を売却すると消費税を納めなければならないので、不動産の売却価格に消費税を上乗せする必要があります。

一方個人には消費税の納税義務がないため、不動産の代金そのままで売却できます。

同じ不動産でも、法人が売却すると個人が売却するケースよりも高額となり、売れにくくなる可能性も出てきます。

かといって消費税分を売買代金に乗せなければ、消費税分を法人が負担して納税しないといけないので、その分利益が小さくなってしまいます。

 

減価償却の違い

減価償却とは

不動産の減価償却とは、購入した不動産が将来にわたって、時間の経過とともに朽ちていくものだけ減価償却費として毎年計上することができる経費のことです。

減価償却ができるのは建物だけで、劣化しない土地は減価償却ができないことも覚えておきましょう。

法人と個人の不動産売却のシーンで、もう1つ押さえておくべきポイントがあります。それは減価償却の考え方の違いです。

不動産の中でも「建物」は、所有している間に年々価値が低下していくので「減価償却」を行います。土地は経年劣化するものではないので減価償却しません。

個人の場合、「定額法」などの決まった方法で建物が毎年減価償却されていきます

一方法人の場合には減価償却は任意であり、年によって法人が減価償却の金額や減価償却するかどうかを変えてもよいことになっています

そこで法人の場合の「簿価」として記載されている建物の価値と、個人が売却するときの建物の価値は異なる可能性があります。

法人所有の建物で、これまで減価償却をあまり行わず簿価が高くなっていれば、売却によって特別損失が出やすくなり節税対策になる可能性があります。

 

贈与や安く売った場合の評価

贈与税についての考え方も、法人と個人とでは異なります。

まず個人が不動産を贈与すると贈与者には税金がかかりませんし、受贈者には「年間110万円までの贈与税の控除」が適用されて贈与税が安くなります。

一方法人が不動産を贈与した場合には、実勢価格や公示地価などを参考に決まる「相場価格」で売却したとみなされる可能性が高くなります。

するとそのみなし利益から寄付金控除できる金額を引いた分に対し、法人税がかかります。

つまり法人が不動産を贈与(寄付)すると、贈与した法人にも法人税がかかるということです。

このことは、完全に無償で贈与した場合だけではなく、相場と比べて安く売却した場合にも同じことが言えます。

その場合、実際の売却価額と相場価格との差額が「寄付金」として計算され、寄付金控除を超える部分に法人税が課税されます。

さらに不動産を無償で譲り受けた法人や安く買い取った法人には「受贈益」が発生し、受贈者にも法人税が課税される可能性が高くなります。

以上のようなことから、法人の場合、安易に不動産を無償で譲渡したり安く売ったりすると、大きな税金がかかる可能性があるので、注意が必要です。

 

瑕疵担保責任について

法人が不動産を売却するとき、瑕疵担保責任にも注意が必要です。
瑕疵担保責任とは不動産などの物の売買をするとき、対象物の瑕疵について売主が負担すべき責任です。
買主は売主に対し、解除や損害賠償請求できます。

個人間の不動産取引の場合、この瑕疵担保責任を免除したり期間を制限したりするケースもあります。

たとえば中古マンション・中古戸建売買などの場合には、瑕疵担保責任なしで取引される例があります。

一方法人の場合「消費者契約法」が適用されるので、「消費者を一方的に害する契約」が禁じられます。

そこで民法が消費者を守るために瑕疵担保責任の規定をおいているのに、これを一方的になしにするのは消費者契約法によって認められない可能性が高くなります。

法人が不動産を売却する際には、物件の売却後も一定期間、解除や損害賠償請求をされるリスクを負い続ける可能性が高くなります。

「瑕疵担保責任」のトラブル事例に関する詳しい記事はコチラから

>>事例を知って事前に回避!不動産売却時のトラブル【瑕疵担保】編

以上が法人と個人が不動産売却した際の主な違いです。どちらが得になるかはケースによって異なります。

また法人の場合には、以下の項目で述べるように不動産売却を節税に利用できる方法もあるので押さえておきましょう。

法人が不動産売却したときにかかる税金

法人が不動産を売却すると、以下のような税金がかかります。

 

法人税、法人地方税、法人事業税

法人の場合、不動産所得が分離課税になっていないので、不動産売却益に対して「法人税」がかかります

法人税は、法人が年間で利益を得たときにかかる税金で、個人の所得税のようなものです。ただし所得が高額な場合の税率は、個人の所得税よりも大幅に低くなっています。

また法人には「法人住民税」もかかります。これは個人の「住民税」に該当する地方税です。

法人税額に住民税率をかけ算して算出する「法人税割」と、法人の資本金などによって決まる「均等割」の合計金額です。

法人税割は法人税の金額によって決まり、均等割は会社の規模によって自治体が決めた額を課税されます。

さらに法人事業税も課税されます。これは、都道府県内で法人が営業していることによってかかる税金です。
利益に応じた計算となるので、赤字になれば法人事業税はかかりません。

また法人事業税として支払った金額は損金算入の対象となります。

以上のように、法人を経営すると法人税、法人住民税、法人事業税のすべてがかかるので、これらはセットで捉えておく必要があります。

法人税だけであれば税率は15~23.2%程度ですが、実際にはそれだけでは済まないのです。

これらをすべて合わせた税金の合計税率を「実効税率」と言います。

不動産を売却したときの実効税率は、年間利益が800万円までであれば26~28%、800万円を超えるケースでは33.8%程度となります。

 

消費税

法人が不動産(建物)を売却すると、消費税もかかります。消費税率は2019年10月から10%に上がりました。

不動産を売却する際には、消費税も上乗せした金額を設定する必要があります。

また法人が不動産を売却する際にも、司法書士に登記を依頼したり不動産仲介業者に依頼したりする場合には、それらの費用に消費税が載せられます。

 

登録免許税、印紙税などは個人と同様

法人が不動産を売却する際にも、登録免許税や印紙税などの税金がかかるのは個人と同様です。

登録免許税は、不動産の登記をしたときにかかる費用です。ただし、所有権移転登記については買主が負担するので、売主の場合には負担はないでしょう。

もともと不動産に担保を設定していた場合、担保権を外すために1件1,000円の抹消登記の登録免許税がかかる可能性はあります。

さらに不動産売買契約には印紙税がかかります。印紙税の金額は以下の通りです。

契約金額印紙税率
10万円を超え50万円以下のもの200円
50万円を超え100万円以下のもの500円
100万円を超え500万円以下のもの1千円
500万円を超え1千万円以下のもの5千円
1千万円を超え5千万円以下のもの1万円
5千万円を超え1億円以下のもの3万円
1億円を超え5億円以下のもの6万円
5億円を超え10億円以下のもの16万円
10億円を超え50億円以下のもの32万円
50億円を超えるもの48万円

法人が不動産売却によって節税する方法

法人の節税対策
法人が不動産を売却する際、節税するには「特別損失」を出すことです。

特別損失とは、不動産を売ってマイナスになったことを意味します。つまり「簿価」の金額よりも低額でしか売れなければ、マイナス分を特別損失としてその年の利益から差し引くことが可能です。

年間の利益が多くなりすぎていて多額の法人税がかかりそうなとき、簿価が高くなっている不動産を売却して特別損失を出すことで、税額を抑えることが可能となります。

法人の場合、不動産をうまく運用して利益を上げるという利用方法もありますが、資産として保有しておき、いざとなったら売却して特別損失を計上して節税を行うという意味でも、不動産を活用できます。

節税に関しては、税理士に助言してもらうのが一番です。もし顧問税理士に対して「頼りない・不満がある」ならば、この機会に変えてみるのもいいかもしれません。

不動産の売り時を逃さないよう知識を身につけよう:まとめ

長引く不況のなか、一部の都市圏では不動産価格は上昇傾向にあります。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、不動産価格の落込みが懸念されている今が売り時かもしれません

本業とのバランスを考えながら、資産として、あるいは節税対策として不動産売却に関する知識を身につけておきましょう。

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